今住んでいるマンションを売却して、一戸建てに住み替えたいの。
マンションには住宅ローンが残っているんだけど、住み替えって何かしらのリスクがあるのかな?
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!
こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
住宅ローンが残っている状態で住み替えるのであれば、何かと不安ですよね。
住み替えには何かとリスクがありますが、そのリスクを理解して行動すれば、損せず住み替えをすることができます。
まず、住み替えには、下記の3つのパターンがあります。
- 購入先行:先に新居を買って、後から旧居を売る。
- 売却先行:先に旧居を売って、後から新居を買う。
- 同時進行:「新居の購入」と「旧居の売却」を同時に行う。
どの方法で住み替えするかによってリスクが変わります。
そこで、今回は、住み替えで知っておきたい11個のリスクについて、お話させていただきます。
この話が終わるころには、住み替えのリスクを把握したうえで、住み替えを計画することができるでしょう。
1.購入先行の4つのリスク
購入先行とは、先に新居を買って、後から旧居を売ることを言います。
購入先行のリスクは、主に下記の3つがあります。
- ダブルローンは審査が厳しい。
- ダブルローンの支払いが大変。
- 旧居を安売りしたくなる。
- 計画性がなければ、旧居を売却できない可能性がある。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
1-1.ダブルローンは審査が厳しい。
旧居に住宅ローンが残っている状態で、新たに新居の住宅ローンを組むことを、ダブルローン(二重ローン)と呼びます。
ダブルローンは、「旧居の住宅ローン」と「新居の住宅ローン」を合算して審査がされるため、審査が非常に厳しくなります。
例えば、下記の例を見てみましょう。
- 旧居の住宅ローンの支払い:毎月10万円
- 新居の住宅ローンの支払い:毎月10万円
この場合、毎月の支払額は下記の通りになります。
10万円+10万円=20万円
そして、年間の支払額は、下記の通りになります。
20万円×12ヵ月=240万円
金融機関の返済比率の条件が25%の場合、下記の年収が必要になります。
240万円÷25%=960万円
単純計算ではありますが、上記の支払いを行うには、年収が960万円以上ある必要があります。
もし年収が足りなければ、結局は金融機関から「旧居を売却すること」を条件にされることが多いです。
また、ダブルローンには、下記のリスクがあります。
1-2.ダブルローンの支払いが大変。
旧居と新居の住宅ローンを支払っていくため、支払いが大変になります。
また、固定資産税や、マンションであれば管理費・修繕積立金もダブルで支払っていかなければなりません。
資金力があれば良いのですが、資金力が無ければ、毎月の支払いが大変になり、下記の損する行動をとろうとしてしまいます。
1-3.旧居を安売りしがちになる。
ダブルローンの支払から解放されたいがために、「旧居を早く手放したい」と考えられる方が多いです。
そして、早く手放すには売却価格を下げることが一番有効ですから、「安売りしてしまう」といったケースが多いです。
1-4.計画性がなければ、旧居を売却できない可能性がある。
不動産を売却するには、住宅ローンの残り(残債)を完済することが条件になります。
不動産を売却したお金で、住宅ローンを完済できればいいのですが、完済できない場合は現金を手出しすることになります。
例えば、下記の例を見てみましょう。
- 住宅ローンの残り:1,500万円
- 売却価格:1,000万円
この場合、住宅ローンを完済するには、500万円を手出ししなければ、売却することができません。
上記は分かりやすくするための単純計算であり、実際には売却するための諸費用や税金も考慮しなければなりません。
あらかじめシミュレーションしておかないと、「新居を購入したものの、旧居が売却できない」といったことになりかねません。
では、次は売却先行のリスクを見ていきましょう。
2.売却先行の2つのリスク
売却先行とは、先に旧居を売って、後で新居を買うことを言います。
売却先行には、下記の2つのリスクがあります。
- 期限までに仮住まいに引っ越さなければならない。
- 仮住まいの費用がかかる。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
2-1.期限までに仮住まいに引っ越さなければならない。
買主がみつかって売買契約を交わした後、引き渡し日までに、仮住まいに引っ越さなければなりません。
売却先行の流れは、下記の順番で行います。
- 売却活動をする。
- 買主と売買契約を結ぶ。
- 仮住まいに引っ越す。
- 決済・引き渡しを行う。
売買契約書には、「いつまでに引き渡す」といった引き渡し日を定めます。
一般的には、売買契約の日から3~4ヵ月以内とすることが多いです。
その期限までに仮住まいに引っ越さなければなりません。
ただ、仮住まいなので間取りや家賃などの妥協はできますし、賃貸住宅は空室が多いので、そこまでリスクではありません。
2-2.仮住まいの費用がかかる。
仮住まいとして賃貸住宅に引っ越す際は、賃貸住宅の諸費用や引っ越し代がかかります。
例として、家賃10万円で敷金2ヵ月分、礼金1ヵ月分の諸費用を見てみましょう。
- 家賃前払い:10万円
- 敷金(2ヵ月分):20万円
- 礼金(1ヵ月分):10万円
- 鍵交換代:1万円
- 火災保険:2万円
- 仲介手数料:10万円(税抜き)
- 合計:53万円
これはほんの一例であり、物件や不動産会社によって諸費用は変わってきますので、あくまで参考までにしてください。
なお、敷金に関しては、退去時に返金される可能性があることを、頭に入れておきましょう。
引っ越し代も、荷物や条件によって変わってきますが、
- 3LDK(4人家族)
- 15km以内への引っ越し
であれば、10万円もかからないでしょう。
では、次は同時進行のリスクを見ていきましょう。
3.同時進行の5つのリスク
同時進行とは、「新居の購入」と「旧居の売却」を、同時に行うことを言います。
購入先行や売却先行よりも効率が良く思えますが、何かとリスクがありますので注意が必要です。
同時進行は、下記の2つのパターンがあります。
- 先に新居を買う契約をする場合
- 先に旧居を売る契約をする場合
では、順番に詳しく見ていきましょう。
3-1.先に新居を買う契約をする場合の2つのリスク
新居を買うためには、旧居を売らなければならないことを前提に、お話ししていきます。
先に新居を買う契約をした場合は、期日までに旧居を売却して、新居と旧居の引き渡しを同時に行います。
これには、下記のリスクが伴います。
- 期限までに旧居を売却しなければならない。
- 引き渡しのタイミングを合わせるのが難しい。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
3-1-1.期限までに旧居を売却しなければならない。
先に新居を買う契約をした場合は、新居の引き渡し日までに、なんとしてでも旧居を売却しなければなりません。
売却できなければ新居を購入することができませんから、新居の契約に違反することとなり、違約金や損害賠償の対象になってしまいます。
このような事態を防ぐために、新居の契約に「買い替え特約」を入れておくと安心です。
買い替え特約とは?
買い替え特約とは、もし、旧居を売却することができなければ、新居の契約を白紙に戻すことができる特約です。
買主にとってはメリットになる特約ですが、しかし、売主にとってはデメリットでしかありません。
売主としては、せっかく契約をしたにもかかわらず、白紙にされたのでは、たまったものではありません。
そのような理由から、売主が個人の場合は、買い替え特約をつけることを断られるケースが多いです。
売主が業者の場合は買い替え特約に応じてくれるケースはありますが、逆に考えると、売主が業者の物件しか買うことができないことになりますので、選択肢が減ってしまうというデメリットがあります。
買い替え特約がないの場合はどうなる?
新居を買うための契約に買い替え特約が無い場合は、新居の引き渡し日までに、旧居をなんとしてでも売却しなければなりません。
そのため、安売りしがちになってしまいます。
もし、価格を下げても売れなければ、最悪、業者に買取をしてもらうという方法もあります。
ただ、買取価格は相場の6~7割り程度になることが多いです。
なぜなら、業者は買取した不動産を転売して、利益を得ることを目的に、買取をするからです。
以上の理由から、先に新居を買う契約をする場合は、買い替え特約が無ければ、大きなリスクを負うことになります。
では、次のデメリットを見ていきましょう。
3-1-2.引き渡しのタイミングを合わせるのが難しい。
「新居の購入」と「旧居の売却」を同時進行する場合、基本的には下記の手順になります。
- 旧居の決済・引き渡しを行う。
- 新居の決済・引き渡しを行う。
旧居の決済・引き渡しを先に行う理由は、旧居の決済・引き渡しが終わらないと、新居の住宅ローンが借りれないからです。
しかし、この手順には問題があります。
旧居の決済・引き渡しが終われば、その時点で、旧居は買主のものになります。
したがって、本来であれば、旧居の決済・引き渡し前までに、売主は引っ越ししておかなければなりません。
しかし、新居の決済・引き渡しが終わってない状態なので、まだ引っ越すことができません。
このような矛盾を避けるために、引き渡し猶予の特約をつけておくのが一般的です。
引き渡し猶予の特約とは?
引き渡し猶予の特約を付けることで、先に決済と所有権移転登記はするけど、マンションは後日引き渡すことができます。
流れとしては、下記のようになります。
- 決済・所有権移転を行う。(※この時点で買主の持ち家になるため、売主は買主の持ち家に住んでいる状態になる。)
- 売主は後日、新居の決済をして引き渡しを受ける。
- 売主は、旧居から新居へ引っ越す。
- 売主は買主へ、旧居を引き渡す。
※引き渡し猶予について詳しくは、下記のページを参照ください。
では、次は「先に旧居を売る契約をした場合のリスク」を見ていきましょう。
3-2.先に旧居を売る契約をした場合の3つのリスク
先に旧居の売買契約をした場合は、期日までに新居を購入し、新居と旧居の引き渡しを同時に行います。
これには、下記のリスクが伴います。
- 期限までに新居を購入しなければならない。
- 引き渡し日を延ばしすぎると、売れにくくなる。
- 引き渡しのタイミングを合わせるのが難しい。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
3-2-1.期限までに新居を購入しなければならない。
先に旧居の売買契約をした場合、旧居の引き渡し日までに、なんとしてでも新居を購入しなければなりません。
そのため、焦ってしまって、新居を妥協して購入してしまう恐れがあります。
もし、期日までに新居を購入することができなければ、仮住まいとして賃貸住宅に住むことも視野に入れておく必要があります。
3-2-2.引き渡し日を延ばしすぎると、売れにくくなる。
上記の理由から、売主としては引き渡し日を延ばしたいところです。
しかし、「引き渡し日を延ばしすぎた条件」で売り出した場合、買主が嫌がって売れにくくなります。
例えば、「1年後に引き渡し」という条件のある物件を、あなたなら買うでしょうか?
引き渡し日は、売買契約の日から3~4ヵ月以内が一般的で、長くても6ヵ月以内がおススメです。
3-2-3.引き渡しのタイミングを合わせるのが難しい。
これは、先ほど「先に新居を買う契約をする場合」でお話しした内容と同じになりますので、省略させていただきます。
3-3.住み替えローンにおけるリスク
同時進行には住み替えローンが使えるというメリットがありますが、リスクがありますので理解しておくことが大切です。
例えば、下記の物件があったとしましょう。
- 旧居の住宅ローンの残り:2,000万円
- 旧居の売却価格:1,800万円
不動産を売却するには住宅ローンを完済することが条件です。
上記の例では、2,000万円-1,800万円=200万円が不足していることになります。
本来であれば、この不足分200万円を手出ししなければなりません。
しかし、住み替えローンを使った場合はこの200万円を借りることができ、そして、新居の住宅ローンに200万円を上乗せして返済することができます。
ただ、今後もし新住居を売却することになった場合、「住宅ローンの残り>売却価格」になる可能性が高くなります。
その辺を考慮したうえで、住み替えローンは利用するべきです。
4.ベストな方法はどれ?
ここまでは、購入先行、売却先行、同時進行での住み替えにおけるリスクについてお話してきました。
「結局、どれがいいの?」と思われると思いますので、ここでは私の見解をお話ししたいと思います。
4-1.資金力がある場合は、購入先行。
資金力があり、ダブルローンを組んでも問題なく支払っていける場合は、購入先行がおススメです。
なぜなら、新居をじっくりと選ぶことができ、また、旧居をじっくりと売却することができるからです。
4-2.資金力がなければ、売却先行。
旧居を売却しなければ新居を購入できない場合は、売り先行がおススメです。
仮住まいにの費用がかかりますが、その分、旧居をじっくりと売却することができるため、高く売れる可能性があります。
不動産の売却のコツは、決してあせらないことです。
同時進行は何かと「あせり」が出てきますので、それを考えると売却先行がおススメです。
まとめ
今回は、住み替えで知っておきたい11個のリスクについてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
まとめとしては、資金力があってダブルローンを組んでも問題なければ、購入先行がおススメです。
旧居を売却しなければ新居を購入できない場合は、売り先行がおススメです。
そして、住み替えを成功させるには、決してあせらないことが大切です。
色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。