
マンションを売るとき、売買契約時に手付金を受け取るって聞いたけど、金額はいくらなのかしら?
お金の使い道を決めておきたいから、あらかじめ知っておきたいわ。
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!

こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
マンションを売却するとき、売買契約時に、買主から手付金を受け取ることが一般的です。
手付金の額は法律で決まりがなく、不動産業者を通して、売り主と買主が相談して、決めるようになります。
相場としては、売却価格の5~10%としたり、きりのいいところで100万円とすることが多いです。
しかし、数十万円といった少額のケースもあり、その場合は注意が必要です。
また、手付金は頭金のようなものですが、売買契約後に、契約を解除するために使われるお金でもあります。
返金しなければならないこともありますので、そのことを頭に入れておくことが大切です。
今回は、マンション売却時の手付金について知っておきたい5つのことを、お話させていただきます。
1.売買代金の一部に充当される。

手付金は、売却代金の一部に充当されます。
したがって、売買契約のときに手付金が支払われた場合は、決済・引き渡しのときに、売却価格から手付金を差し引いた、残金が支払われます。
全日本不動産協会の売買契約書のひな形にも、下記のように記されています。
第2条 (手付金)
買主は、売主に対し本契約締結と同時に手付金として標記の金員を支払う。
2.手付金は、残代金支払いのときに売買代金の一部に充当する。ただし、手付金には利息を付さない。
例えば、売却価格が2,000万円で、手付金が100万円の場合は、一般的に下記のように支払われます。
- 売買契約時に、手付金100万円
- 決済・引き渡し時に、残金1,900万円

なるほどね。
手付金は、売却代金の一部になるんだね。
2.不動産の売買では、解約手付けとして扱われる。

手付金と言っても、法律では下記の3種類があります。
- 証約手付
- 解約手付
- 違約手付
このうち、不動産の売買では、上記2番目の「解約手付」として扱われることが一般的です。
解約手付けとは?
解約手付とは、売買契約後に手付解除できることを言います。
では、手付解除とはなんなのか。
もし、売買契約後に、買主が契約を解除したい場合は、手付金を手放すことによって、解約できます。
これを「手付放棄」と呼びます。
逆に、売主が契約を解除したい場合は、手付金の2倍の額を買主に支払うことで、解約できます。
これを、「手付倍返し」と呼びます。
これらの「手付放棄」と「手付倍返し」によって契約解除することを、「手付解除」と呼びます。
全日本不動産協会の売買契約書のひな形にも、下記のように記されています。
第10条(手付解除)
売主は、買主に受領済みの手付金の倍額を支払い、また買主は売主に支払済みの手付金を放棄してそれぞれ本契約を解除することができる。
ただし、売主が本条による解除の意思表示をなす場合には、受領済みの手付金の倍額を現実に買主に提供しなければならない。
なお、後日の紛争を回避するため、解除の通知は、書面をもって行う。
例として、手付金が100万円の場合は、下記の通りになります。
- 買主は、手付金100万円を放棄することによって、売買契約を手付解除することができる。
- 売主は、手付金の2倍である200万円を支払うことによって、売買契約を手付解除することができる。

売買契約を結んだ後でも、売買契約を手付解除することができるんだね。
買主から手付解除されるかもしれないことを考えたら、売買契約を結んだとしても安心できないわね。
手付解除は、いつまでできるのかしら?
3.手付解除はいつまでできるの?

手付解除は、いつまでもできるわけではなく、通常では売買契約書に期限を定めます。
いつまでも手付解除が出来てしまえば、売主は決済・引き渡しに向けて行動できなくなりますよね。
期限は相談で決めるようになりますが、売買契約の日から2週間前後で定めることが多いです。
ちなみに、民法では、契約の履行に着手するまでと書かれています。
民法 第557条
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
また、売買契約書にも、同様のことが書かれています。
第10条(手付解除)
2.本条による解除権は、相手方が本契約の履行に着手したときまたは標記の期日(E)を経過したときは、行使することができない。
しかし、契約の履行といっても、どのような行動が契約の履行になるのか判断が難しいため、実務上では、売買契約書に期限を定めることが一般的なのです。

なるほど、そういうことね。
確かに、期限が定めてある方が分かりやすいわね。
手付金の相場についても、詳しく教えてください。
4.手付金の相場

手付金の額は決まりがないので、不動産業者を通して、売主と買主とで相談して決めるようになります。
相場としては、売買価格の5~10%とすることが多いです。
例えば、売買価格が2,000万円であれば、100万円~200万円が相場となります。
また、売買価格が4,00万円だとしても、きりがいいところで、100万円とするケースも多いです。
ようするに、手付解除が簡単にできないように、大金と感じる額にすることが多いです。
ただ、最近では手付金が少ない傾向にあり、10~30万円のケースも珍しくはありません。

なぜ、手付金が10万円~30万円などの少額なケースがあるの?
少額だったら、なんだか不安を感じるわ。

手付金の支払い方法は、手持ちの現金で支払われることが一般的です。
しかし、最近では、手持ちの現金を持ち合わせていない方が、多い傾向にあります。
もちろん、手持ちの現金がなくても、住宅ローンを組めば、マンションを購入することができます。
そのようなケースだと、手付金が10~30万円などの少額になるケースが多いです。
ただ、少し注意しなければならない点が、手付解除がされやすくなるという点です。
売買契約を結んだあとは、買主は手付金を放棄することで、売買契約を解除することができます。
もし、手付金が100万円の場合は、大金なので放棄しにくいものです。
しかし、手付金が10万円の場合はどうでしょうか。
100万円よりも放棄しやすいですよね。
このように、手付金が少額な場合は、手付解除のリスクが高くなるわけです。

そういうことね。
手付金が少額の場合は、手付解除のリスクを頭に入れておいた方がよさそうね。
5.手付金は、すぐ使わない方がいい理由。

買主から手付金を受け取ったとしても、すぐには使わない方がいいです。
なぜなら、返金しなければならないケースがあるからです。
特に、買主が住宅ローンを組む場合は、注意が必要です。
住宅ローンの流れとしては、まず、仮審査に通ってから、売買契約を結びます。
そして、次は、売買契約後に、本審査があります。
仮審査に通っていれば、基本的に本審査も通りますが、たまに落ちることがあります。
本審査に落ちてしまえば、買主はマンションを購入することができません。
そういうときの為に、売買契約書には、住宅ローン特約というものを入れておきます。
「本審査に通らなかった場合は、売買契約が白紙になります」との内容です。
もし、本審査に落ちて売買契約が白紙になった場合は、手付金を買主に返さなければなりません。
したがって、基本的に住宅ローンの本審査に通るまでは、手付金は使わずに保管しておいた方がいいです。

そういうことね。
買主が住宅ローンの本審査に通るまでは、手付金は使わずに保管しておくわ。
番外編:不動産会社が売主の場合の手付金

参考までに、不動産会社が売主の場合の手付金について、お話させていただきます。
不動産会社(宅建業者)が売主の場合は、手付金の額が、宅建業法で下記のように制限されています。
- 未完成物件は、売買価格の5%以下、かつ、1,000万円以下。
- 完成物件は、売買価格の10%以下、かつ、1,000万円以下。
上記以外でも、不動産会社が保全措置を講じれば、1,000万円を超える手付金を受け取ることもできます。
なお、不動産会社保全措置を講じたとしても、売買価格の2割を超える手付金を受け取ることは、宅建業法により禁じられています。
保全措置とは、不動産会社が倒産や夜逃げなどした場合に、手付金を返金できなくなるのを防ぐために、銀行などと保証契約を結び、銀行が保証してくれるようにする措置のことです。
しかし、実務上では、1,000万円を超える手付金を預かることは、ほとんどないです。
なぜなら、不動産会社にとって保全措置の手続きが面倒だからです。
まとめ

今回は、についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
まとめとして、重要なことを再度お伝えします。
- 手付金は、売買価格の一部に充当される。
- 不動産の売買では、解約手付けとして扱われ、売買契約後でも、契約を手付解除をすることができる。
- 手付解除ができる期限は、売買契約書に定められることが一般的。
- 手付金の相場は、売却価格の5~10%、もしくは、きりのいいところで100万円とすることが多い。
- 手付金が少額の場合は、手付解除のリスクが高まることを理解する。
- 手付金は、買主が住宅ローンの本審査に通るまでは、使わないで保管しておいた方がいい。

色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。