今度マンションを売却する予定なんだけど、大規模修繕の前と後では、売却するならどっちのタイミングがいいのかしら?
大規模修繕の後の方が、外観や共用部分がキレイになるから、高く売れそうな気がするんだけど・・・。
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!
こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
結論から言うと、それぞれマンションによって違いのある話ですが、「大規模修繕を待つことなく早く売却した方がよい」という考え方が一般的です。
大規模修繕によって建物がキレイになりますが、そのぶん売却価格が高くなるかと言えばそうでもなく、あまり影響しないというのが実感です。
それよりも心配なのが、大規模修繕による修繕積立金の増額です。
近年、工事費用が修繕積立金だけでは足りないケースが非常に多く、社会問題となっています。
専門家によると、今後30年間で修繕積立金を増額せずにやっていける管理組合は、全体のおよそ3%に過ぎないそうです。
あなたのマンションは、修繕積立金が十分に積み立てされているでしょうか?
修繕積立金が増額する可能性はないでしょうか?
中古マンションの購入希望者は、修繕積立金や管理費などの毎月のコストにシビアです。
そのため、修繕積立金が増額となると、その分、売却しにくくなってしまいます。
もし、大規模修繕により修繕積立金が増額になる可能性があるのであれば、その前の方が売却しやすいでしょう。
そこで、今回はマンション売却における大規模修繕について、お話しさせていただきます。
この話が終わるころには、大規模修繕を念頭に、マンションをどのタイミングで売却するべきか、判断がつくと思います。
それではまいります!
1.そもそも大規模修繕とは?
理解を深めるために、まずは大規模修繕について、おさらいします。
大規模修繕とは、外壁の塗装工事・屋上の防水工事など、マンションの老朽化防止や性能維持のために計画的に行われる大規模な修繕のことで、多額の費用がかかるものをいいます。
大規模修繕を行う時期は、マンションの老朽化状況・管理状況によって違いがありますが、新築から12~15年周期が多いです。
国土交通省のガイドラインにも「大規模修繕工事は周期が12年程度」と記載があります。
大規模修繕は多額の工事費用がかかるため、あらかじめマンションの管理組合で「長期修繕計画」を作成することが一般的です。
長期修繕計画とは?
長期修繕計画とは、大規模修繕を「どの時期に、どのくらいの費用で」実施するかを予定するもので、期間は25~30年で計画することが一般的になってきています。
そして毎月、修繕積立金や駐車場使用料を積み立てしておき、そのなかから工事費用を支払います。
しかし、先ほどもお話しした通り、修繕積立金だけでは大規模修繕の費用をまかなうことができないケースが非常に多く、修繕積立金を増額せざるを得ない状況にあります。
では、なぜこのような事態になったのでしょうか??
2.修繕積立金が不足する理由
修繕積立金が不足する理由は、下記のようなものがあります。
- 修繕積立金の設定が低すぎる!
- 管理費・修繕積立金の滞納が多い!
- 工事費が高騰している!
では、順番に詳しく見ていきましょう。
2-1.修繕積立金の設定が低すぎる!
新築当初の修繕積立金の額はマンション分譲会社が設定していますが、そもそも戦略的に低く設定されていることがほとんどです。
なぜなら、毎月のコストとなる修繕積立金が低い方が、マンションが売れやすいからです。
マンションの購入希望者は賃貸に住まれている方が多く、毎月家賃を支払っています。
その「毎月の家賃」よりも、「マンション購入後の毎月の支払額(住宅ローン返済額 + 管理費 + 修繕積立金)」が低ければ、購入しやすくなりますよね。
新築当初は、毎月6,000円~8,000円ほどで設定されていることが多く、1㎡あたりを計算すると、約100円になります。
実際のことろ、この額では大規模修繕の工事費用をまかなうことが非常に厳しいです。
国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によると、修繕積立金の額の目安は、下記の表のとおり1㎡あたり約200円になっています。
階数/建築延べ床面積 | 平均値 | |
---|---|---|
15階未満 | 5,000㎡未満 | 218円/㎡・月 |
5,000~10,000㎡ | 202円/㎡・月 | |
10,000㎡以上 | 178円/㎡・月 | |
20階以上 | 206円/㎡・月 |
※長期修繕計画が30年で計算されており、それ以降はもっと単価が上がることが予想されます。
※機械式駐車場がある場合は、さらに修繕積立金が加算されます。
上記の表はあくまでも目安にはなりますが、たとえば、3LDKで70㎡の場合は、修繕積立金の額が14,000円になります。
つまり、新築当初は国土交通省の目安よりも約半額の設定になっているわけです。
では、マンション分譲会社は、どのようにして修繕積立金を低い設定にしているのでしょうか?
2-1-1.段階増額積立方式の採用
まず、段階増額積立方式の採用により、修繕積立金を低い設定にしていることが多いです。
毎月の修繕積立金の積立方法には、
- 均等積立方式
- 段階増額積立方式
の2種類ががあり、新築マンションは「段階増額積立方式」が採用されていることがほとんどです。
1.均等積立方式とは?
均等積立方式は、長期修繕計画の期間中、均等に積み立てる方式です。
たとえば、新築から30年間で必要となる修繕工事費用の総額をだして、毎月均等に積み立てていく方法です。
毎月の修繕積立金の額が変わることがないため、本来は均等積立方式の方が望ましいとされています。
2.段階増額積立方式とは?
一方、段階増額積立方式は、新築から5年周期や10年周期で、修繕積立金を増額していく方式です。
増額しなければ修繕積立金が不足してしまいますが、住人の反対により計画通りに増額ができなかったり、増額によって滞納者が増えたりと、現在問題視されています。
新築マンションでは、ほとんどが「段階増額積立方式」を採用しており、マンション分譲時の修繕積立金を低く設定しています。
分譲時の修繕積立金が、将来的に2倍以上、3倍以上になったというケースもあります。
2-1-2.修繕積立基金の採用
次に、最近では修繕積立基金の採用により、修繕積立金を低く設定することが多くなりました。
修繕積立基金とは?
修繕積立基金とは、マンション購入時に一括払いする諸費用の一つで、「修繕積立準備金」や「修繕積立一時金」とも呼ばれています。
将来の修繕に備えておく費用なので、用途は修繕積立金とまったく同じです。
金額はマンションの地域や規模・住戸の広さなどによって違いがありますが、20万円~40万円ほどが多いです。
マンション分譲会社としては、新築マンションが売れやすくするために、新築当初の修繕積立金を毎月6,000円~8,000円ほどに抑えたいところです。
しかし、それでは将来の大規模修繕のときに修繕積立金が不足してしまいます。
そこで考えたのが、購入時に修繕積立基金として一括で徴収することです。
購入希望者は毎月のコストにシビアであり、修繕積立金が高額だと抵抗感が強くなります。
それよりも、マンション購入時に修繕積立基金として一括で徴収した方が、抵抗感が少なくなることから、採用されることが多くなりました。
しかし、実際のところは、修繕積立基金を徴収したとしても、1回目の大規模修繕はまかなうことができても、2回目の大規模修繕は不足することが多いのが現状です。
2-1-3.ずさんな長期修繕計画の作成
分譲時の修繕積立金を低くするために、長期修繕計画がそもそも将来、修繕積立金が不足する計画になっていたり、もしくは増額や一時金の徴収が前提に計画されていることもあります。
また、長期修繕計画は30年間で計画することが一般的になっていますが、10年間や20年間しかないケースもあります。
その他、そもそも長期修繕計画を作成していないケースもあります。
国土交通省の「平成25年度マンション総合調査調査」によると、そもそも長期修繕計画を作成していない管理組合が、平成25年度は8.0%もあります。
長期修繕計画がなければ、どの時点でいくら積み立てしておけばいいのか把握しずらくなります。
このような方法により、分譲時の修繕積立金を安く設定しているケースがあります。
2-3.管理費・修繕積立金の滞納が多い!
マンションの住民で、管理費・修繕積立金を滞納している方が多ければ、その分、修繕積立金が不足することになります。
データをみると滞納者は意外と多く、国土交通省の「平成25年度マンション総合調査調査」によると、管理費・修繕積立金を3ヵ月以上滞納している住戸がある管理組合は37%もあります。↓
さらに、6ヵ月以上滞納している住戸がある管理組合は22.7%、1年以上滞納している住戸がある管理組合は15.9%です。
築年数が古くなるほど、また、総戸数が大きくなるほど、滞納の率が高くなる傾向にあります。
管理費・修繕積立金の滞納が増えれば、当然、修繕積立金が不足します。
2-4.工事費が高騰している!
社会情勢が変化し、当初計画していた工事費用が膨らむことで、修繕積立金でまかなえないケースもあります。
近頃では、
- 消費税増税を見越した駆け込み需要
- 東日本大震災による人手不足
- 東京オリンピックによる人手不足
の影響を受けて、下記のグラフのように工事費が値上がりしています。↓
長期修繕計画は、工事費の高騰を考慮して、一定期間ごとに見直すことが理想ではあります。
以上が、修繕積立金が不足する主な理由になります。
3.修繕積立金が不足するときの対処方法
修繕積立金が不足する場合は、下記の対処方法などがあります。
- 経費削減をして修繕積立金に充てる。
- 修繕積立金を増額する。
- 修繕積立一時金を徴収する。
- 金融機関から管理組合の名義で借り入れをする。
まずは不足分を補うことができる手段がないか検討します。
たとえば、管理料やエレベーターのメンテナンス料の見直しなどがあります。
最初は分譲会社の子会社などが管理委会社になっているケースが多く、管理料やエレベーターのメンテナンス料など、経費が高額になっているケースがあります。
管理会社を変更するなどの経費削減を行って、その分を修繕積立金に充ててまかなうことができれば理想的です。
もし、経費削減をしても不足する場合は、「修繕積立金の増額」や「一時金の徴収」、「金融機関からの借り入れ」が必要になってきます。
4.修繕積立金の増額前に売却
大規模修繕により修繕積立金が増額となると、売却しにくくなってしまいますから、その前に売却した方が良いでしょう。
ポイントとしては、マンション売却のタイミングは「修繕積立金の増額が検討される前」です。
そのためには、大規模修繕の具体的計画が始まる前に動く必要があります。
大規模修繕や修繕積立金の増額の予定があれば、重要事項説明で説明しなければならなりません。
まとめ
今回は、マンション売却における大規模修繕についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
話をまとめますと、「大規模修繕を待つことなく早く売却した方がよい」という考え方が一般的です。
大規模修繕によって建物がキレイになりますが、そのぶん売却価格が高くなるかと言えばそうでもなく、あまり影響しないというのが実感です。
それよりも心配なのが、大規模修繕による修繕積立金の増額です。
もし修繕積立金が不足する状況であれば、増額になる可能性があり、そうなれば売却しにくくなってしまいます。
それであれば、増額前に売却した方が良いでしょう。
色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。