
今度、マンションを売却する予定なんだけど、少しでも高く売るには、売り出し価格をどのように決めたらいいのかしら?
相場よりも高いと売れなさそうだし、逆に低いと損してしまいそうだわ。
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!

こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
マンションを売却するにあたって、売主としては少しでも高く売却したいものですから、売り出し価格の設定は迷いますよね。
おっしゃる通り、相場より高い価格を設定すると、売れにくくなります。
逆に、低い価格を設定すると損してしまいますから、慎重に決めなければなりません。
では、どのように価格設定をすれば、上手くいくのか。
結論から言うと、まずは下記の3つの価格を決めます。
- 最低の価格
- 相場の価格
- 希望の価格
そして、スケジュールを組んで戦略的に売却活動を行えば、高く売却することにつながりやすくなります。
それともう一つ、売り出し価格を最終的に決定するのは、不動産会社ではなく売主であるという心構えも大切です。
不動産会社は、売主の利益を第一に考える会社もあれば、自社の利益を第一に考える会社もあります。
後者の場合、売り出し価格を低めに提案してくるでしょう。
なぜなら、その方が早く売れて、仲介手数料を受け取ることができるからです。
このような、自社の利益を第一に考える不動産会社の言いなりにならないようにも、売主の心構えも大切になってきます。
今回は、不動産を高く売却するための価格設定について、お話させていただきますね。
1.まずは売主自身で相場を調べる。

売り出し価格を決めるには、不動会社の査定が必要不可欠になりますが、査定を依頼する前に、売主自身で相場を調べてみましょう。
ご自身で相場を調べておくことで、不動産会社から査定額について説明を受ける際に、理解度が高まります。
相場を調べる方法としては、下記の2つがあります。
- 過去の取引事例を調べる。
- 現在売り出し中の相場を調べる。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
1-1.過去の取引事例を調べる。
過去の取引事例を調べるには、国土交通省が運営している「土地総合情報システム」が役立ちます。
サイト名が「土地総合情報システム」と書かれていますが、土地だけでなくマンションについても調べることができます。
情報量が少ないサイトではありますが、過去に実際に取引された物件の情報が記載されていますので、参考にしてください。
1-2.現在売り出し中の相場を調べる。
現在、売り出し中の物件を調べるには、不動産のポータルサイトである「SUUMO」や「アットホーム」、「HOME’S」などを活用しましょう。
主に中古の物件を購入する方向けのサイトではありますが、現在どのような物件が売り出し中なのか、見ることができます。
言わば、現在売り出し中の物件は、あなたのライバルなわけです。
あなたの物件は、いくらの価格で出すと魅力があるのかを意識して、見てみましょう。

まずは、自分で相場を調べることが大事なんだね。
確かに、売り出し価格を最終的に決めるのは売主だから、売主自身も相場を把握しておくべきだね。
2.複数の不動産会社に査定を依頼する。

不動産を少しでも高く売るためには、複数の不動産会社に査定を依頼することも、ポイントの一つになります。
1社だけでなく、複数の不動産会社に依頼する理由としては、下記のことがあげられます。
- 査定額を比較することができる。
- 不動産会社・営業マンを比較することができる。
- 不動産会社同士が競い合うため、より良いサービスを受けることができる。
1社だけでは、査定額の正確性や不動産会社・営業マンの良し悪しの判断が難しくなりますので、必ず複数社に査定を依頼しましょう。
「複数社に査定を依頼すると面倒」と思われるかもしれませんが、無料一括査定サービスを活用すれば、簡単にできます。
不動産一括査定サービスはいくつかありますが、東証一部上場企業のNTTデータが運営している「HOME4U(ホーム・フォー・ユー)」がおススメです。
なぜなら、主に下記の4つのメリットがあるからです。
- 東証一部上場のNTTデータが運営しているので安心。
- 厳選された不動産会社900社のなかから、最大6社に一括査定。
- 2001年からの運営実績のなかで、悪徳不動産会社は排除されている。
- 査定結果の連絡方法は「メール」「電話」から選択できる。
もちろん費用は無料なので、利用しない手はありません。

査定額や不動産会社・営業マンを比較するためにも、複数社に依頼するようにするわ。
無料一括査定サービスを利用すれば、簡単そうだしね。
2-1.机上査定と訪問査定、どっちを選ぶ?

不動産の査定には、机上査定(簡易査定)と訪問査定(実査定)の2種類があります。
机上査定は、お客様から頂いた物件情報をもとに、過去の取引事例を調べて、物件を見ることなく机上で査定をすることを言います。
一方、訪問査定は、不動産会社の営業マンが実際に物件を訪問して、査定を行います。
もちろん、より正確な査定額が出るのは訪問査定になりますが、多くの不動産会社が訪問査定をするとなれば、その対応が大変です。
無料一括査定サービスを活用する際は、まずは机上査定を選びましょう。
そして、約6社からの査定結果を見て、その中から良さそうな不動産会社を3社ほどピックアップして、今度は訪問査定を依頼しましょう。
そのようにすれば、効率よく査定の対応ができると思います。

なるほどね、確かに6社が訪問すると、対応が大変そうだわ。
それに、スーツを着た営業マンが次から次へと訪問してくるところを、近所の人に見られたくないしね。
まずは机上査定をして、良さそうな不動産会社に、今度は訪問査定を依頼するようにするわ。
3.不動産会社の査定方法を知る。

では、普段、不動産会社はどのようにして、査定額を割り出しているのでしょうか?
不動産会社の査定方法を知っておけば、最終的にご自身で売却価格を設定する際に役立ちます。
基本的に不動産の査定方法は、主に下記の3つがあります。
- 原価法
- 収益還元法
- 取引事例比較法
この中で、居住用(マイホームやセカンドハウスなど)の不動産には、取引事例比較法が用いられてることが一般的です。
ちなみに、原価法は不動産鑑定などに、収益還元法は投資用不動産の査定に利用されます。
したがって、ここでは取引事例比較法について説明させていただきます。
取引事例比較法とは、過去の取引事例や現在売り出し中の物件と比較して、売り出し価格を割り出す方法です。
実際の事例を参考にしますので、信ぴょう性が一番高い査定方法になります。
ただ、デメリットも存在しますので、その部分を理解しておくことも大切です。

居住用の不動産は、主に取引事例比較法で査定されているんだね。
デメリットは何があるのかしら?
3-1.事例が少ない場合は、価格を出しずらい。

取引事例比較法は、その名の通り、過去の取引事例とあなたの物件を比較して、査定額を割り出す方法です。
取引事例が豊富にあればいいのですが、もし少なければ、価格がぶれてしまいます。
最低でも10件は参考にしたいところではあります。
3-2.事例の売却理由が分からない。
不動産会社が取引事例を調べる際は、会員だけが閲覧することのできるレインズ(不動産流通機構)に登録されている取引事例を参考にします。
過去の取引事例なので信ぴょう性が高いのですが、そのデータには売却理由が書かれていません。
大半の物件が相場で売買されていますが、中には売り急いで相場よりも安く売却されたケースや、売り急ぐことなく相場よりも高く売れたケースなどもあります。
その辺の事情が分からないため、やはり取引事例を10件程度は参考にしたいところです。

取引事例が少ない場合は、査定額を出しずらくなるんだね。
その時は、より慎重に価格を設定しなければならないね。
4.「査定額」=「売れる価格」ではない。

よく勘違いされる方が多いのですが、「査定額」=「売れる価格」ではないことに、ご注意ください。
不動産の査定は、車の査定と違って、不動産会社が買い取る訳ではありません。
あくまでも、「3か月以内に売れるであろう価格(参考価格)」に過ぎないわけです。
複数の不動産会社に査定を依頼すれば、ついつい査定額が一番高い不動産会社を選んでしまいたくなります。
しかし、不動産会社の中には、そんな売主の心理を悪用して、わざと査定額を高くする業者がいるので、要注意です。
1社だけ高すぎる査定額を提示してきた場合は、危険信号です。
その査定額の根拠を十分に聞き取るようにしましょう。

査定額が高ければ嬉しく思うけど、売れる価格ではないから喜ぶのはまだ早いわね。
1社だけ査定額が高い場合は、注意した方がよさそうね。
5.「3つの価格」を決める。

複数の不動産会社から査定額が出揃いましたら、3つの価格を決めていきます。
予め3つの価格を決めておくことで、迷うことが少なく戦略的に売却活動を行いやすくなります。
冒頭でもお話いたしましたが、3つの価格とは下記の3つになります。
- 最低の価格
- 相場の価格
- 希望の価格
では、順番に詳しく見ていきましょう。
5-1.最低の価格
最低の価格とは、「この価格までだったら売ることができる価格」のことを言います。
住宅ローンの残債がある場合は、その残債を一括返済しなければ、マンションを売却することが出来ません。
例えば、住宅ローンの残債が2,050万円で、諸費用が80万円の場合をみてみましょう。
この場合、もし2,050万円で売却した場合は、住宅ローンは返済できるものの、諸費用80万円が足りないことになります。
したがって、80万円を貯金などから手出しする必要性があります。
もし、手出しの資金がない場合は、2,130万円以上の価格でなければ、実質売却することはできません。
このことから、最低の価格は2,130万円になります。
5-2.相場の価格
相場の価格とは、不動産会社の査定額になります。
一般的に、不動産会社は3ヶ月以内に売却できるであろう価格を提示しますから、その価格が相場になります。
複数の不動産会社の査定を依頼した場合は、査定額の平均が相場だと考えていいでしょう。
例として、ここでは相場の価格を2,500万円としておきます。
5-3.希望の価格
希望の価格とは、売主が「この価格で売りたい!」という希望の価格になります。
相場よりも高く売るためには、相場の価格よりも高い価格設定で売り出さなければなりません。
とは言っても、相場よりもかけ離れた価格では、売却することが難しくなります。
不動産会社の査定額の1割り増しくらいの価格が理想です。
例えば、査定額の平均が2,500万円の場合は、2,750万円くらいが希望の価格になります。
5-4.「3つの価格」を調整する。
「3つの価格」が出そろいましたら、今度は価格調整を行います。
少し価格調整を行うことで、売れやすくなったり、高く売れたりする可能性がアップします。
上記の例では、3つの価格は下記の通りになりました。
- 最低の価格:2,130万円
- 相場の価格:2,500万円
- 希望の価格:2,750万円
ここでは参考までに、これらの価格調整を行っていきます。
不動産は物件によって価格設定の戦略が変わってきますから、あくまでも一例としてとらえてください。
5-4-1.十万円の単位を調整する。
上記の3つの価格の十万円の単位を、下記のように「8」に調整します。
- 最低の価格:2,180万円
- 相場の価格:2,480万円
- 希望の価格:2,780万円
よくスーパーなどで、商品が100円ではなく98円で売られていたりしているのは、ご存知ですよね。
100円も98円もさほど価格は変わりませんが、98円の方がかなり安く感じるという心理があるそうです。
不動産の世界でも、この手法は有効です。
2,500万円で売却するよりも、2,480万円の方が心理的に安く感じますので、十万円の単位は「8」もしくは「9」にすることをおすすめします。
ちなみに、1~4の数字だと高く感じ、6~9は安く感じる。
そして、5や0はどちらとも感じないという心理があるようです。
5-4-2.価格交渉があることを覚悟した上で、価格設定をする。
不動産の売買では、購入希望者からの価格交渉があることがほとんどです。
購入希望者は、「中古の不動産は値下げしてもらえる」と言うことを前提に、物件を探されている方が多いです。
したがって、価格交渉があることを前提に、価格設定はしましょう。
よくあるケースとしては、十万円単位の端数を価格交渉されることです。
例えば、売り出し価格が2,780万円の場合は、80万円が端数となります。
もちろん、この他にも2,780万円の内、180万円を価格交渉してくるケースも多くあります。
したがって、予め価格交渉があることを前提に、売り出し価格を設定しましょう。
また、価格交渉があった際に怒りを感じないように、心構えをしておくことも大切です。
値下げをしてあげることで、スムーズに売却へとつながるケースが多いです。
上記の例では、3つの価格は下記の通りでした。
- 最低の価格:2,180万円
- 相場の価格:2,480万円
- 希望の価格:2,780万円
ここでは、価格交渉があることを前提に、下記のように、それぞれ100万円ずつアップしました。
- 最低の価格:2,280万円
- 相場の価格:2,580万円
- 希望の価格:2,880万円
5-4-3.「2,580万円」の場合は、思い切って「2,480万円」にする価値がある。
上記では、相場の価格が2,580万円になっていますが、思い切って2,480万円にした方が、より売れやすくなります。
その理由としては、「価格が安いから」という理由のほかにも、「2,500万円以内で探されている方にヒットする」という理由があるからです。
現在、中古の不動産を探されている方は、インターネットの不動産サイトで検索する方が多いです。
その際、検索条件を入力する項目がありますが、価格は500万円単位で入力できる仕組みになっていることが多いです。
もし、検索条件を2,500万円以内とした場合は、2,580万円の物件はヒットしません。
したがって、思い切って2,480万円にしてみる価値は十分にあります。
5-5.「3つの価格」をもって、戦略的に売却活動をする。
以上、これらの3つの価格をもって、戦略的に売却活動を行っていきます。
おさらいとして、上記の例では、3つの価格は下記の通りになりました。
- 最低の価格:2,280万円
- 相場の価格:2,580万円
- 希望の価格:2,880万円
売却するまでに時間的余裕がある方は、希望の価格2,880万円から売り出してみましょう。
成約に至らない場合は、相場の価格2,580万円に値下げをし、それでも成約に至らない場合は、さらに値下げをしていきます。
もし、時間的余裕がない方は、2,580万円、もしくはそれ以下から売り始めてみるといいでしょう。

なるほどね、3つの価格を設定しておくと、確かに分かりやすいわね。
もし、希望の価格から売り出して成約に至らない場合、どのタイミングで値下げをしたらいいのかしら?
7.値下げのスケジュールを立てておく。

3つの価格を決めたら、次は「どのタイミング」で「どのくらい値下げをする」のか、スケジュールを立てておきます。
いざ売りに出すと、値下げする際に躊躇(ちゅうちょ)してしまいますが、予めスケジュールも立てておくと、迷うことなく売却活動を進めることができます。
7-1.値下げのタイミング
値下げをするタイミングは、「いつまでに売却したいのか」によって変わってきます。
例えば、事情により3ヶ月以内に必ず成約しなければならない場合をみてみましょう。
- 売り出し開始から1カ月間は、希望の価格2,880万円。
- 2か月目以降は、相場の価格2,580万円。
- 3か月目以降は、約1割り値下げして2,280万円。
このような感じで、予めスケジュールを立てておくと、迷うことが少なく値下げをしていけます。
時間的余裕がある方は、もう少し長い期間でスケジュールを組んでいきます。
ただ、長い期間といっても、6ヵ月程度を限度にすることをおすすめします。
なぜなら、売れ残りの物件は「何かマイナス要素があるのかな?」と、購入希望者が不安になるからです。
7-2.値下げ幅は、どのくらいが効果的なの?
値下げをする際は、売り出し価格の1割り程度を目安にすると、インパクトがあります。
もし、2,880万円で売り出した際は、次回の値下げは2,580万円程度が理想です。
逆に、2,000万円台の物件で数十万円~100万円程度の値下げであれば、購入希望者の心は動かないことがほとんどです。
まとめ

今回は、不動産を高く売却するための価格設定の方法についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に、重要な点をまとめますと、下記のようになります。
- まずは売主自身で相場を調べる。
- 複数の不動産会社に査定を依頼する。
- 不動産会社の査定方法を理解しておく。
- 「査定額」=「売れる価格」ではないことを頭に入れておく。
- 3つの価格を決める。
- 値下げのスケジュールを立てておく。

色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。