今住んでいるマンションを売って、同時に新居も買って、タイミングよく住み替えたいの。
不動産屋さんからは「引き渡し猶予の特約をつけましょう」と言われたんだけど、どういうことかしら?
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!
こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
不動産の売買では、何かと専門用語がでてきますので、理解しにくいですよね。
引き渡し猶予とは、決済・引き渡しの日に、売却代金を受け取って所有権移転登記はするものの、マンションの引渡しは後日行うことを言います。
不動産の売買では、決済・引き渡しの日に、下記の3つことを同時に行います。
- 買主から売却代金を受け取る。
- 売主から買主へ所有権移転登記をする。
- 買主へマンションを引き渡す。
それに対して、引き渡し猶予の特約がある場合は、下記の2つことしか行いません。
- 買主から売却代金を受け取る。
- 売主から買主へ所有権移転登記をする。
そして、マンションの引き渡しに関しては猶予を与えて、後日(決済日から約1週間以内が多い)行われます。
では、なぜ住み替えで、引き渡し猶予の特約を付けるのか。
今回は、住み替えで引き渡し猶予をつける理由について、お話させていただきます。
1.引き渡し猶予の特約をつける4つの理由
引き渡し猶予の特約は、すべての住み替えの売買契約につけるわけではありません。
旧住居に住宅ローンの残り(残債)があって、かつ、新住居を住宅ローンで購入する際に起きます。
その理由は、下記の4つの理由があるからです。
- 旧住居に残債がある場合、新住居の住宅ローンの審査が厳しくなる。
- 新住居の住宅ローンを組むためには、旧住居の残債を完済することを、金融機関から条件づけられる。
- 旧住居の残債を完済するには、自己資金がなければ、売却代金を充てる必要がある。
- 旧住居の決済・引き渡しと、新住居の決済・引き渡しを同時に行うことは、時間的に難しい(金融機関や法務局の関係から)。
したがって、下記の3つの手順を踏みます。
- 引き渡し猶予の特約を付けて、まずは旧住居の決済をして、残債を完済する。
- そして後日、新住居の決済・引き渡しを行って、新住居へ引っ越す。
- 引っ越し後、旧住居を買主へ引き渡す。
引き渡し猶予の期間は、一般的に、決済日から1週間以内で設定されることが多いです。
決済日以降は、売主から買主に所有権が移転したにもかかわらず、売主が住んでいるという、少し違和感のある状態になります。
そうゆうことね、マンションが買主のものになったのに売主が住んでいるって、少し変な感じだね。
何か、注意点はあるのかしら?
2.引き渡し猶予の3つの注意点
引き渡し猶予がある場合、通常の売買契約の内容とは違ってきますから、その分、注意点があります。
注意点は、主に下記の5つがあります。
- 覚書を作成する。
- 賃料は発生しない。
- 管理費や修繕積立金、固定資産税の精算は?
- 電気・ガス・水道はいつまで負担するの?
- 売主には、引き渡すまで管理義務(善管注意義務)がある。
では、順番に見ていきましょう。
3-1.覚書を作成する。
通常の売買契約の内容とは違ってきますから、必ず覚書を作成してもらうようにしましょう。
多くの不動産会社がこちらから言わなくても作成すると思いますが、なかには口約束で済ます不動産会社もあるそうなので、注意が必要です。
覚書の雛形は、以下のサイトが参考になります。
3-2.賃料は発生しない。
決済日に所有権移転登記を行えば、マンションはすでに買主のものになりますが、売主が住んでいる状態です。
その間は、買主が売主に貸しているような状況ですが、賃料は発生しないことが一般的です。
ただ、それを考慮して、売買代金を値引きされることが多いです。
3-3.管理費や修繕積立金、固定資産税の精算は?
通常であれば、管理費や修繕積立金、固定資産税などは決済日をもって日割り精算をします。
一方、引き渡し猶予がある場合は、決済日ではなく引き渡し日をもって日割り精算されることが一般的です。
そうでなければ、売主都合で引き渡し猶予があるわけですから、買主としては納得がいかないでしょう。
3-4.電気・ガス・水道はいつまで負担するの?
電気・ガス・水道の料金も、管理費などと同様です。
引き渡し日前が売主負担、引き渡し後が買主負担になります。
3-5.売主には、引き渡すまで管理義務(善管注意義務)がある。
もし、決済日から引き渡しまでの間に、地震などの天災地変などで建物の一部が毀損(壊れた)場合は、売主負担になります。
なるほどね、上記の注意点を覚書に明記されているか、確認しないといけないね。
まとめ
今回は、引き渡し猶予の特約を付ける理由についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に申し上げておきたいことがありますが、引き渡し猶予は売主にとっては都合のいい特約にはなりますが、買主にとっては微妙なところではあります。
なぜなら、買主の持ち家になったにもかかわらず、売主が住むことに、違和感を感じるからです。
また、もし、売主の方の「新住居の決済・引き渡し」でトラブルがあった場合、引き渡し日が伸びる可能性だってあります。
買主は少なからずともリスクを負いますので、売主としては、それをきちんと説明してくれる不動産会社を選ぶべきだと思います。
色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。