不動産の決済の話なんだけど、売買代金の振込手数料は、売主と買主では、どっちが負担するのかしら?
不動産屋さんからは「売主負担」って言われたけど、売主のわたしとしては納得がいかないわ。
本来なら、売買代金を支払う人、つまり買主が負担するべきでしょ?
そうだ、佐藤さんに相談してみよう!
こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
振込手数料について、不動産業者から詳しい説明がなく「売主負担」と言われたのであれば、納得がいきませんよね。
実際、不動産業者の説明不足によって、もめることが多い話ではあります。
結論から言いますと、不動産会社によって考え方に違いがあり、「売主負担」とする業者もいれば、「買主負担」とする業者もいます。
わたしの経験上では、ケースバイケースにはなりますが、基本的には「売主負担」とすることが多かったです。
そこで、今回は、振込手数料の負担者について、深堀りしてお話しさせていただきます。
この話が終わるころには、振込手数料の負担者について理解できると思います。
1.民法では誰が負担者なの?
まず初めに、法律である民法では、誰が負担者なのか見ていきましょう。
結論から言いますと、民法では振込手数料は「買主負担」になります。
その理由として、下記の条文を参照ください。
(弁済の費用)
第485条 弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は、債務者の負担とする。ただし、債権者が住所の移転その他の行為によって弁済の費用を増加させたときは、その増加額は、債権者の負担とする。
売主・買主ともに特に意思表示がなければ、債務者負担、つまり「買主負担」になるわけです。
この民法に従って、振込手数料は「買主負担」とする不動産会社は多いです。
ただ、不動産の売買では、売主と買主とで売買契約を交わします。
基本的には民法よりも売買契約で定めたことが優先されますから、売買契約の内容が重要になってきます。(民法や他の法律で強行法規とされている規定に反さない限り)
では、売買契約書には、どのように記載されているのか、見ていきましょう。
2.売買契約書では誰が負担者なの?
売買契約書には、振込手数料の負担者について、どのように記載されているのでしょうか?
結論から言いますと、一般的な売買契約書には「振込手数料の負担者」に関する定めがないため、売主と買主が、話し合いをして決めることになります。
(参考までに、売買契約書(公益社団法人 京都府宅地建物取引業協会)のリンクを貼っておきます。)
不動産会社によっては、あらかじめトラブルを避けるために、売買契約書の特記事項に「振込手数料は買主負担(もしくは売主負担)とする」といった文章を記載するケースもあります。
そういった特記事項があればので、それに従うことになります。
では、民法や売買契約書を踏まえて、振込手数料の負担者をどのような理由で決めているのか、見ていきましょう。
3.大きく分けて3つのケースがある。
振込手数料の負担者は不動産会社によって違いがあるわけですが、大きく分けて下記の3つのケースの違いがあります。
- 民法に従って「買主負担」とするケース。
- 「誰が振り込みを希望しているのか」で決めるケース。
- 「売主が自分の口座に振り込む」かたちをとって「売主負担」とするケース。
私が新人営業マンのころ、元銀行員の上司から教えてもらった方法は、上記3番になります。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
1.民法に従って「買主負担」とするケース。
先ほどもお話ししましたが、民法に従って「買主負担」とする不動産会社は多いです。
民法では、売主・買主ともに特に意思表示がなければ、「買主負担」になります。
また、売主の人数などによって、振込手数料の負担割合が変わったりします。
例えば、
- 売主が一人の場合は、買主が全額負担。
- 売主が共有名義などで二人以上いて、複数の口座に振り込みをする必要がある場合は、買主が一人分だけ負担し、残りの人数分は売主が負担。
ただ、民法だけに従った場合は、欠点があります。
詳しくは、次の「誰が振り込みを希望しているの」で決めるケースで説明していきます。↓
2.「誰が振り込みを希望しているのか」で決めるケース。
上記の通り、民法だけに従えば「買主負担」になりますが、そもそも売買契約書によれば、買主は振り込みで支払う義務がなく、現金で支払ってもいいわけです。
したがって、もし、買主が振込手数料を負担したくなければ、現金で支払えば全く問題がないわけであって、売主も文句が言えません。
このような理由から、不動産会社によっては「誰が振り込みを希望しているか」で決めるケースもあります。
例えば、買主が「現金で支払いたくない!現金を出すのはリスクがある!」などの理由で振り込みを希望する場合は、買主負担にします。
逆に、売主が「現金を数えたくない!」や「現金を持ち歩きたくない!」やなどの理由で振り込みを希望した場合は、売主負担にします。
このように、「誰が振り込みを希望しているのか」で、振込手数料の負担者を決めるケースもあります。
3.「売主が自分の口座に振り込む」かたちをとって「売主負担」とするケース。
売主が、買主から受け取った売買代金を、自分の口座に振り込むかたちをとって、振込手数料を売主負担にするケースもあります。
しかも、現金を出さずに、伝票だけで処理することができます。
私が新人営業マンのころ、元銀行員の上司から教えてもらった方法がこれになります。
少し話がややこしいですが、買主が、売主に直接振り込むわけではありません。
方法としては、下記の流れで行います。
- 買主が、銀行口座から売買代金を引き出すために、出金伝票を記入する。
- 売主が、売買代金を自分の口座へ振り込むために、振込伝票を記入する。
- その出金伝票と振込伝票を、銀行員が同時に処理して、現金を出さずに支払い完了となる。
本来なら、買主が出金伝票を記入すれば、現金が出てきます。
そして、買主が売主へ現金を渡して、売主が自分の銀行口座に振り込みます。
しかし、現金を出すことは、何かとリスクがあります。
大金ですし、数えるのも大変です。
したがって、現金を出さずに、伝票だけで処理するわけです。
つまり、買主が売主に直接振り込むのではなく、売主が自分の口座に振り込むわけです。
したがって、振込手数料を負担するのは、売主になります。
なるほどね。
売主が売買代金を受け取って、自分の口座に振り込むから、振込手数料は売主負担になるんだね。
でも気になるんだけど、買主が売主に直接振り込んだらいけないの?
3-1.買主から売主に直接振り込んだらいけないの?
買主が売主に直接振り込むこともできますが、売主にとって何かとリスクがありますから、あまりおススメな方法ではありません。
なぜなら、万が一、振込先の記入ミスなどで振り込みができなかった場合には、指定口座不存在として、買主の口座に返金されてしまうことがあるからです。
買主が売主に振り込む場合は、買主が振込伝票に記入して、振り込みを行います。
売主としては、自分の銀行口座に着金したことを確認したいところですよね。
しかし、着金確認には時間がかかることが多く、不動産の決済では着金確認までをしないことが多いです。
その場合、買主の振込伝票の原本をコピーして、そのコピーを売主に渡して支払完了とします。
そして、司法書士はそのまま法務局へ向かい、所有権移転等を行います。
もし、万が一、振り込みができなかった場合は、買主の口座に返金されてしまうことがあります。
「不動産の所有権は買主に移転したのに、売買代金は支払われていない」といった、あってなならない状況になってしまいます。
そのようなリスクを避けるためにも、売主が自分の口座に振り込む方が、望ましいわけです。
そうすれば、もし何らかの理由で振り込みができなかった場合は、金融機関から売主に連絡がいきますので、安心です。
まとめ
今回は、決済時の振込手数料の負担者についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に話をまとめますと、振込手数料の負担者は、不動産会社の考え方によって違いがあり、主に下記の3つがあります。
- 民法に従って「買主負担」とするケース。
- 「誰が振り込みを希望しているのか」で決めるケース。
- 「売主が自分の口座に振り込む」かたちをとって「売主負担」とするケース。
わたしの経験上では、ケースバイケースにはなりますが、基本的には「売主負担」とすることが多かったです。
売主が自分の銀行口座に振り込むかたちをとった方が、安全であるとの考えからです。
色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。