瑕疵担保責任

資産家資産家

マンションを売却する予定だけど、売主には瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)があることに不安を感じているの。

瑕疵担保責任は「いつまで」そして「どこまで」負わなければならないのかしら?? できることなら免責にしてもらいたいわ。

そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!

マンション売却アドバイザーマンション売却アドバイザー

こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。

瑕疵担保責任については民法で定められていますが、売主にはかなり「きびしい内容」になっています。

しかし、売主・買主の話し合いによって決めることのできる任意規定のため、実際は民法よりも「ゆるい内容」で売買契約を交わすことが慣例になっています。

したがって、慣例を知ったうえで、売買契約の内容をしっかりと理解することが大切です。

そこで、今回は、マンション売却における瑕疵担保責任について、期間や範囲、免責など詳しくお話させていただきます。

この話が終わるころには、瑕疵担保責任について理解できると思います。

1.瑕疵担保責任とは?

佐藤さん佐藤さん

瑕疵担保責任をかんたんに言うと、

「マンションを引き渡したあとに、売主が気づかなかった欠陥(けっかん)や不具合がみつかったときは、売主が責任を持って対応しましょう。」

といった内容です。

中古マンションは、時間の経過とともに、建物や設備などが劣化しています。

中古マンションの売買では、買主に現状のまま引き渡すことが一般的ですが、買主は内覧しても欠陥などの専門的なことは分かりません。

また、設備がきちんと機能するかまではなかなか見ることができず、実際に住んでみないと分からないことがいっぱいあります。

そのようなリスクから買主を守るために、瑕疵担保責任があります。

民法では、もし、引き渡したあとに欠陥などが見つかったときは、買主は損害賠償を請求するか、場合によっては、契約を解除したうえで売買代金を返してもらうことができます。

瑕疵担保責任については、民法の第570条と第566条で定められています。

第570条

売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。
ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

第570条をかんたんに説明すると、下記のようになります。

  • マンションに、売主が気づかなかった欠陥などがあったときは、第566条を適用します。
  • だけど、強制競売は対象外です。

そして、第566条は下記のとおりです。(まずは1項だけ記載します)。

 第566条 1項

売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。

この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

第566条を、例をもちいて分かりやすく説明すると、下記のようになります。

  • 買主は、マンションに欠陥があることを知らされていなかった。
  • 欠陥がひどすぎて修復できない。住むために買ったのに、住めない。そんな場合は契約を解除できる。
  • 修復できて住める場合は、その費用を請求できる。

こんな感じになります。

なお、瑕疵担保責任は、売主と買主の話し合いによって決めることができる「任意規定」です。

したがって、下記のことなどを決めることができます。

  • 売主はいつまで責任を負うのか(期間)
  • どの欠陥まで責任を負うのか(範囲)
  • そもそも責任を負わないのか(免責)

2.瑕疵担保責任の期間

瑕疵担保責任の期間は、売主が個人の場合と、売主が不動産業者の場合で、違いがあります。

2-1.売主が個人の場合

個人が中古マンションを売却するときは、「引き渡しから2~3ヵ月以内まで」とすることが慣例になっています。

また、そもそも瑕疵担保責任を負わない(免責)とすることもあります。

では、法律を見てみましょう。

民法では、買主が隠れた欠陥を知ったときから1年以内に、契約の解除または損害賠償の請求をしなければならないとなっています。

第566条 3項目

前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。

民法に従うと、例えば、買主が8年後に隠れた瑕疵を見つけたときは、それから1年以内に請求すれば大丈夫なわけです。

(ただ、ずっと請求できるわけではなく、民法の「債権等の消滅時効」により、引渡しから10年までとなります。参考:瑕疵担保責任の消滅時効

これでは、売主があまりにもかわいそうです。

そこで、実際の売買では、引き渡しから2~3ヵ月以内とすることが慣例になっています。

2-2.売主が不動産業者の場合

売主が不動産業者の場合は、宅建業法により、引き渡しから最低でも2年間は、瑕疵担保責任を負わなければなりません。

また、民法よりも不利になるような特約は、無効になります。

「不動産業者はプロだから、売るならちゃんと責任もってね」といった感じの主旨になっています。

3.瑕疵担保責任の範囲

瑕疵担保責任は、売主がどこまで責任を負うのか、責任の範囲が明確でなければ、トラブルになる可能性が極めて高いです。

判例では、瑕疵とは「物が通常有すべき品質・性能を欠くこと」と定義づけられています。

しかし、例えば「お湯がでない」「扉が開かない」「床にキズがある」といったケースはどうなるのか、明確ではありません。

そこで、売買契約のときに、責任の範囲についても明確にすることが慣例となっています。

範囲についても、売主が個人の場合と、売主が不動産業者の場合で違いがあります。

3-1.売主が個人の場合

一般的には、下記の4つを責任の範囲とすることが多いです。

  1. 雨漏り
  2. シロアリの害
  3. 給排水設備の故障
  4. 建物の構造上、主要な部位の腐食(例:大黒柱など)

(※不動産会社によって売買契約書の内容が違いますので、よく確認する必要があります。)

マンションの場合、責任を負うのは専用部分だけであり、共用部分については管理組合の負担になります。

実際のところ、マンションの場合は、一戸建てと比較した場合にはなりますが、上記4つの欠陥が少ないです。

しかし、起こりうることなので、売買契約書をしっかりと確認しましょう。

3-2.売主が不動産業者の場合

売主が不動産業者の場合は、瑕疵担保責任の範囲を制限することはできません。

宅建業法の第40条で、民法よりも買主に不利になるような特約をしてはいけないことになっています(※瑕疵担保責任の期間を、引渡しから二年以上とする特約はできる)。

したがって、換気扇やガスコンロ、給湯器など、建物と一体になっている付帯設備の故障についても、瑕疵担保責任を負うとされています。

4.瑕疵担保責任の免責

築年数がかなりたっていたり、空き家の状態が長く続いたときは、瑕疵担保責任を負わない(免責)とすることもあります。

免責にする場合は、最初から「瑕疵担保責任免責」と条件をつけて、売り出すことが一般的です。

4-1.免責のメリット

  • 瑕疵担保責任を負わないため、安心して売却することができる。

4-2.免責のデメリット

  • 買主がリスクを負うため、その分、売れにくくなる。
  • 買主から「何かあったマンションでは?」と疑われることがある。
  • 免責を理由に、その分、値下げ交渉をされることがある。

注意点として、売主は隠れた欠陥などについて責任を負わないだけで、気づいていた欠陥などについては、責任をまぬがれることはできません。

買主に対して説明責任があり、それを怠ると、契約違反や詐欺になる可能性もあります。

このことについては、民法の第572条で定められています。

第572条

売主は、第560条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。

免責にするかしないかの判断はマンションによりますので、不動産業者と相談して決めるようにしましょう。

5.引き渡し後のトラブルを未然に防ぐには?

引き渡し後のトラブルを未然に防ぐには、おもに下記の4つがあります。

  1. マンションの状態をしっかりと伝える。
  2. ホームインスペクション(住宅診断)を受ける。
  3. 瑕疵担保保険を保険でカバーする。
  4. 不動産会社独自の保証を利用する。

上記のなかで、費用がかからないのは1番目の「マンションの状態をしっかりと伝える」です。

他の3つは費用がかかるため、利用数はまだまだ少ないです。

では、順番に詳しく見ていきましょう。

5-1.マンションの状態をしっかりと伝える。

マンションの状況をしっかりと買主に伝えることが、引き渡し後のトラブルを防ぐことにつながります。

内覧のときは、買主に徹底的に見てもらうよう、不動産業者に伝えておきましょう。

また、売買契約のときに、物件状況等報告書(告知書)という書類も作成します。

物件状況等報告書とは、下記のように、物件の状況について売主が買主に報告する書類になり、売主が状況を記入します。

※下記の画像は、国土交通省の物件状況等報告書の一部をコピーしたもので、実際はもっと項目があります。

物件状況等報告書

欠陥や不具合のある箇所は、なかなか買主に伝えづらいかもしれませんが、知っていることを正直に、かつ正確に伝えることが、トラブルを未然に防ぐことにつながります。

ちなみに、不動産業者には、売買における調査や重要事項を説明する義務はありますが、欠陥などの専門的な調査・説明をする義務はありません。

また、売買の当事者ではないため、瑕疵担保責任も負いません。

あくまでも、知っていることを説明する義務は売主にあり、瑕疵担保責任も売主が負います。

5-1.ホームインスペクション(住宅診断)を受ける。

ホームインスペクション(住宅診断)とは、住宅に詳しい専門家であるホームインスペクター(住宅診断士)が、第三者の立場で、住宅を診断・評価することをいいます。

一般的には、

  • 住宅の劣化状況。
  • 欠陥があるかどうか。
  • 改修すべき箇所や、その時期、その費用など。

が診断され、報告書にまとめられています。

売主が利用するタイミングとしては、マンションを売り出す前が多いです。

利用することで、下記のメリットが得られます。

  • 建物の状態が分かるため、買主に安心感を与えることができる。
  • マンションを引き渡したあとの建物に関するトラブルを、未然に防ぐことができる。

このように、中古住宅の売買に役立つサービスではありますが、まだまだ売主の利用数は少ない方です。

なぜなら、費用がかかるというデメリットがあるからです。

相場は5~10万円ほどで、マンションを売り出す前に利用する場合は、売主負担になります。

5-2.瑕疵担保責任を保険でカバーする。

瑕疵担保責任のための保険として、「既存住宅売買かし保険(個人間売買タイプ)」というものがあります。

保険に加入することで、引き渡し後に建物に瑕疵がみつかった場合は、その補修費用をまかなうことができます。

ただ、保険の対象となるのは、住宅の柱や壁などの「構造耐力上主要な部分」や、窓や屋根などの「雨水の浸入を防止する部分」などです。

どちらかというと、中古マンションよりも中古一戸建てにより役立つ保険です。

補修費用や調査費用、転居・仮住まい費用などが支払の対象となり、支払限度額は500万円または1000万円です。

保険期間は5年間または1年間となります。

保険に加入するには、マンションを買主に引き渡す前に、第三者の建築士による検査を受けて、問題がない場合は保険に加入できます。

もし、問題がある場合は、問題個所の修復をしなければ、加入はできません。

5-2-1.保険会社はどこ?

既存住宅売買かし保険を取り扱っている保険会社は、国土交通省から指定された下記の5社になります。(2018年3月3日現在)

5-2-2.検査機関はどこ?

検査機関は、一般社団法人「瑕疵担保責任保証協会」が運営する「登録事業者等の検索サイト」で検索することができます。

5-2-3.費用はどのくらいかかる?

費用は、保険料と検査料の2つに分かれ、保険期間が保険金額、マンションの面積により変わってきます。

例えば、日本住宅保証検査機構で、保険期間は5年間、保険金額は1,000万円、面積が70~85㎡の場合は、下記のとおりです。

保険料 34,500円 + 検査料 30,240円 + 合計 64,740円

もっと詳しくは、日本住宅保証検査機構のページを参照ください。

5-2.不動産会社独自の瑕疵保険

不動産会社が独自で行っている瑕疵担保責任に対する保険・保証もあります。

不動産会社によってサービス内容が異なりますが、取り扱っている不動産会社を選ぶのも一つの手です。

例えば、不動産業界No1の三井のリハウスでも、建物チェック&サポートサービスがあります。

まとめ

マンション売却アドバイザーマンション売却アドバイザー

今回は、マンション売却における瑕疵担保責任についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?

最後に重要な点をまとめますと、下記のようになります。

  • 瑕疵担保責任の期間は、個人の場合は「引き渡しから2~3ヵ月以内まで」が慣例。
  • 瑕疵担保責任の範囲は、雨漏り、シロアリの害、給排水設備の故障、建物の構造上、主要な部位の腐食(例:大黒柱など)の4つが慣例。
  • 免責にすることもできるが、売主は隠れた欠陥などについて責任を負わないだけで、気づいていた欠陥などについては、責任をまぬがれることはできない。

資産家資産家

色々教えてくれてありがとう!

また分からないことがあれば、教えてね。