

不動産会社が両手仲介をしようとすると、売主にとってマイナスになるって話を聞いたんだけど、本当かしら?
本当だとしたら、両手仲介には気を付けないといけないわね。
そうだ、佐藤さんに聞いてみよう!

こんにちは。マンション売却アドバイザーの佐藤です。
「両手仲介は、売主にとってマイナスになる」との話を聞いてしまうと、それが本当なのか気になりますよね。
結論から言うと、不動産会社が両手仲介を目指すとなれば、売主にとってマイナスになるケースはあります。
なぜなら、不動産会社は下記の3つの行動を起こしかねないからです。
- 他の不動産会社に物件情報を隠そうとする。
- 早く売るために、価格を下げようとする。
- 他社よりも自社の購入申込みを優先させる。
また、そもそもが、売主・買主両方の味方になることは、難しい話ではあります。
そこで、今回は、両手仲介が売主にとってマイナスになる理由について、お話させていただきます。
この話が終わるころには、両手仲介について理解することになるでしょう。
1.不動産会社の報酬の受け取り方は2つ

不動産会社の仲介手数料の受け取り方には、下記の2種類があります。
- 片手仲介
- 両手仲介
では、順番に詳しく見ていきましょう。
1-1.片手仲介とは?
片手仲介とは、売主もしくは買主の「片方」だけから仲介手数料を受け取ることを言います。
例えば、A不動産会社が売却の依頼を受けて、B不動産会社が買主を見つけた場合、仲介手数料の受け取り方は下記のようになります。
- A不動産会社は、売主から仲介手数料を受け取る。
- B不動産会社は、買主から仲介手数料を受け取る。
1-2.両手仲介とは?
それに対して両手仲介とは、1社の不動産会社が、売主と買主の「両方」から仲介手数料を受け取ることを言います。
例えば、A不動産会社が売却の依頼を受けて、自社で買主を見つけた場合、仲介手数料の受け取り方は下記のようになります。
- A不動産会社は、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取る。
2.不動産会社としては両手仲介が好ましい理由

両手仲介は、1件の仲介で、売主と買主の両方から仲介手数料を受け取ることができるため、不動産会社にとっては効率のいい仕事になります。
不動産の仲介手数料は、下記の計算式にて割り出されます。
売却価格×3%+6万円=仲介手数料(税抜き)
これが、仲介手数料の「上限額」になります。
最近では差別化を図るために、仲介手数料を割引する不動産会社が増えてきましたが、しかし、まだまだ上限額を請求する不動産会社がほとんどです。
例えば、売却価格が3,000万円の場合の仲介手数料を見てみましょう。
3,000万円+3%+6万円=96万円(税抜き)
片手仲介の場合は「96万円」になりますが、両手仲介の場合は2倍の「192万円」になります。
売り上げが倍になるわけですね。
そのため、不動産会社は両手仲介を成立させようとして、売主に対してマイナスになるような行動でも、行うようになるわけです。(もちろん、不動産会社にもよりますが・・・。)

両手仲介だと、1件の仲介で、売り上げが2倍になるんだね。
それなら、不動産会社も両手仲介を目指したくなるわね。
2.両手仲介の3つの問題点とは?

両手仲介は、1社の不動産会社が仲介しますので、スピーディーに対応してくれる点はありますが、両手仲介ならではの問題点もあります。
不動産会社が両手仲介を狙うとなれば、下記の行動を起こすようになります。
- 他の不動産会社に物件情報を隠そうとする。
- 早く売るために、価格を下げようとする。
- 他社よりも自社の購入申込みを優先させる。
では、順番に見ていきましょう。
2-1.他の不動産会社に物件情報を隠そうとする。
両手仲介を目指すとなると、自社で買主を見つけるため、他社に物件情報を隠そうとします。
この行為を、物件情報を囲い込むことから「囲い込み」と呼ばれています。
例えば、売却の依頼を受けたA不動産会社が、指定流通機構であるレインズに物件情報を登録したとします。
その物件情報を見たB不動産会社は、お客様へ紹介するために、A不動産会社に「紹介できるかどうか」の確認を取ります。
その際、A不動産会社は、購入申込みが入っていないのにもかかわらず、「購入申込みが入ったので、紹介できません。」との嘘を言って、紹介させないようにします。
これが一般的に行われている囲い込みです。
売主にとって機会損失となる、とんでもない行為になりますが、残何ながら、不動産業界ではよくある話なのです。
2-2.早く売るために、価格を下げようとする。

両手仲介を成立させる為には、他社に先越されないようにしようとします。
そこで、売主に価格交渉をして、早く売ろうとするケースがあります。
では、どのようにして交渉してくるのか、例を見ていきましょう。
2-2-1.売り出し価格を下げようとする。
不動産の世界でも、売り出し価格が低ければ低いほど、早く売れやすいです。
そのため、売り出し価格を低く提案して、媒介契約を締結しようとするケースがあります。
2-2-2.買主の価格交渉に応じるように、説得してくる。
購入希望者から価格交渉があった場合、売主を説得して早く売ろうとします。
例えば、売り出し開始から1週間以内に5件も問い合わせがあり、1件の購入申込みがあったとしましょう。
その購入申し込みには、「200万円を値引き」との条件があったとします。
本来であれば、売り出しから1週間以内に5件も問い合わせがあれば、その値引きに応じなくても、他の購入希望者から購入申込みがある可能性が考えられます。
しかし、「このお客様を逃すと、厳しいかもしれません・・・。」のようなことを言って、値引きに応じさせようと説得してきます。
2-3.他社よりも自社の購入申込みを優先させる。
購入申し込みが、自社と他社で同時にあった場合、自社を優先させるケースがあります。
たとえ、他社の購入申込みの方が有利だったとしてもです。
例えば、自社が2,400万円、他社が2,500万円で購入申込みがあったとしましょう。
もちろん、売主としては2,500万円の購入希望者を優先させたいところです。
しかし、それでは両手仲介が成立しませんから、他社の購入申込みを意図的に隠し、自社の購入申込みの話しかしてこないケースもあります。
売主としては、高く売るチャンスを逃したことになります。
2-4.そもそも売主・買主両方の味方になるのは難しい。
そもそも、売主と買主の両方の味方になることは難しい話ではあります。
なぜなら、交渉ごとがあるからです。
売主の味方になった場合は、少しでも高く売るために、交渉するべきです。
逆に、買主の味方になった場合は、少しでも安く買うために、交渉するべきです。
売主と買主では利益が相反していますから、両方の味方になることは難しい話なのです。
ちなみに、契約社会であるアメリカでは、両手仲介が禁止されています。
なぜなら、売主が両手仲介を許さないからだそうです。

不動産会社が両手仲介を目指すとなると、色々と問題が出てくるんだね。
この両手仲介って、どうやったら防げるのかしら?
3.どうすれば両手を防げるのか?

両手仲介は、売主にとってマイナスになる可能性がありますから、できることなら防ぎたいところですよね。
しかし、法律違反ではないため、なかなか難しいことではあります。
では、どうすれば両手仲介を防げるのか。
ここでは、両手仲介を防ぐ方法として、下記の3つをご紹介させていただきます。
- 両手仲介をしない不動産会社に依頼する。
- 質の良い不動産会社を見極める。
- 一般媒介で複数の不動産会社に依頼する。
では、順番に詳しく見ていきましょう。
3-1.両手仲介をしない不動産会社に依頼する。
最近では、この両手仲介を問題視して、売主だけを担当する不動産会社が出てきました。
最も有名なのが、ソニーグループが運営するソニー不動産です。
ソニー不動産では、売主の利益を追求するために、原則、一つの物件で売主と買主の両方を担当することを禁止しています。
したがって、少しでも高く売るためには、このような不動産会社が好ましいでしょう。
ただ、今のところ1都3県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)しか対応しておりません。
1都3県で不動産を売却される方にとっては、強い味方になると思います。
3-2.質の良い不動産会社を見極める。
売主専用の不動産会社がない地域では、信頼のおける不動産会社を見極めることが大切です。
そのためには、無料一括査定サービスを活用して、複数の不動産会社を比較することが必須になります。
おススメの無料一括査定サービスは、NTTデータが運営する「HOME4U」です。
有料の不動産会社約500社のなかから、最大6社に査定依頼ができます。
3-2-1.媒介契約中の囲い込みを確認するには?
媒介契約中の不動産会社の囲い込みを確認する簡単な方法として、YahooやGoogleなどの検索サイトで、「マンション名 売り出し価格」を入力して、検索してみましょう。
物件情報が他社のホームページに掲載されていたり、不動産のポータルサイトに他社が掲載している場合は、囲い込みがされていない証拠です。
逆に、自社のホームページのみ、もしくは不動産のポータルサイトに自社のみが掲載している場合は、囲い込みをされている可能性があります。
この確認方法は100%確実ではありませんが、参考にはなると思います。
3-3.一般媒介で複数の不動産会社に依頼する。
両手仲介を防ぐ方法として、一般媒介で複数の不動産会社に依頼をする方法もあります。
ただ、不動産の売買が初めての方は、専任媒介の方が良いでしょう。
なぜなら、複数の不動産会社と連絡を取り合うわずらわしさがありますし、不動産会社には報告義務が無いため、売れない場合は放置される可能性もあるからです。
※媒介契約について詳しくは、下記のページを参照ください。
まとめ

今回は、両手仲介が売主にとってマイナスになる理由についてお話させていただきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に重要なことをまとめますと、両手仲介を狙う不動産会社は、主に下記の3つの行動を起こす可能性があります。
- 他の不動産会社に物件情報を隠そうとする。
- 早く売るために、価格を下げようとする。
- 他社よりも自社の購入申込みを優先させる。
そして、両手仲介を防ぐ方法としては、主に下記の3つがあります。
- 両手仲介をしない不動産会社に依頼する。
- 質の良い不動産会社を見極める。
- 一般媒介で複数の不動産会社に依頼する。

色々教えてくれてありがとう!
また分からないことがあれば、教えてね。